二人の占い師(その5)

『先生』の顔色が変わる!
自分が来る事を予見していたというのか?
(これはフィクションです)

「な、何?君は一体、何処で.....」

無意識に声も大きくなる
猫占い師は右手の人差し指を自らの口に当て
「お静かに」というゼスチャーをした後、こう言った

「何も仰る必要はありませんよ、全て知っていますからね」

「あなたが誰で何をしに来たのかもね」

「でも、問題は何一つないのです」

そこまで聞くと『先生』は右の手のひらを前につき出し
「ちょっと待ちたまえ」と遮る

「問題がない?問題がないとはどういう意味か?」

「何故、そのようなことが言えるのだね?」

感情を押し殺すように淡々と話す『先生』
そうすることで気持ちも落ち着いてくる
ようやく猫占い師の顔を観察する余裕を取り戻していた

野卑なようで高貴なところもある端整な顔立ち
だが、その眼光は鋭く、常人のものではない
おどけた態度で上手くごまかしてはいるが
それなりに修羅場をくぐって来たことが窺える

そんな観察が行われているのを知ってか知らずか
猫占い師はちょっと襟元の乱れを直しつつ語る

「第一に私はあなたの敵ではない」

「第二にあなたと私の商売は競合しない」

両手のひらを上に向け「参ったね」というような動作
何も隠し事などないと言いたいのだろうか
そして付け加える

「唯一の問題は、あなたが私の事を知りたいだけです」

「でも、それはすぐに解決しますよ」

そう言いながら水垢一つないグラスにぶどう酒を注ぐ
真紅の液体がグラスをゆっくりと満たしてゆく
『先生』にはそれがスローモーションに見えていた
まるで砂時計の砂が落ちるのを見つめているようだ

「私ごときの事を知るのに大した時間はかかりません」


シェードランプが点るだけの薄暗い書斎

二人の奇妙な酒宴が始まるのだった


つづく


『先生』はどうなってしまうのか?
猫占い師の毒牙にかかってしまうのか?



(これはフィクションです!)